ゼブラフィッシュ三叉運動神経の発生に異常を示す突然変異体を用いた細胞分化および軸索進展機構の解析

       

どのような分子群により運動神経の各発生段階は制御されているのか?これは、神経発生生物学の重要な問いの一つです。
我々は、神経核の形成から軸索の誘導、標的筋肉への投射に至るそれぞれの発生段階を制御している分子機構の解明を目指して、三叉運動神経後核(Vp)の形成と、Vpおよび顔面神経(VII)の軸索伸張過程の様々な段階で異常を示す10系統を単離しました。time-lapse recordingによる細胞移動の解析より、Vpは分化の時期および場所で分けられる2つの運動神経細胞の集団から構成されており、後期(48hpf) に分化した集団が、前期(36hpf)に分化した集団を追い越して移動するinside-outの移動様式をとることが明らかになりました。ところがfreeze frame (fzf)では、後期に分化する集団に特異的に変異が認められ、神経核の形成が阻害されることが示されました。inside-outの細胞移動様式は大脳新皮質等、神経系の構築に重要な役割を果たしています。我々は、この変異体の解析を通して神経細胞の移動を制御する新しい分子機構を解明することを目指しています。

 

Vpの軸索が下顎部の標的筋肉へと伸張する過程は1)感覚神経の軸索と共通の経路からの分岐と標的筋肉への到達、2)第1鰓弓内での分岐と反体側への軸索の伸張、3)第1鰓弓-第2鰓弓境界の越境、4)第2鰓弓内の標的筋肉上の伸張の4つのステップから構成されていています。このように、様々な軸索が共有して伸張している「幹線」から離れて、自分自身の行き先へと続く独自の経路へと乗り換え、さらにそれぞれの行き先でのより特殊な環境に合わせてより細かく挙動が制御されて行く様子は、神経系がネットワークを構築して行く様々な局面で観察することが出来、多くの分子間の相互作用により高度に制御されていることが予想されます。我々は、これらVpの軸索伸張の各ステップで異常を示す8系統の突然変異体を単離しました。これらの原因遺伝子の解析を通して、運動軸索の伸張が最終的な標的へ向かってより細かく調整されて行く様子を分子間の相互作用として再構成して理解することを目指しています。

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田中英臣

「生き物」は、どのような仕組みで自己の存在を維持しているのか?そのような、素朴すぎて誰も気に止めずにいるような疑問に答えられる日が来ることを夢見て研究を続けています。突然変異体解析の現場にいると、一つの遺伝子が壊れることで引き起こされる表現型にも驚かされますが、それが欠けていても壊れたなりに整合性のあるカタチを形成してくることに一層深い感動を覚えます。一つの集合体として調和を保とうとする仕組みこそ、生き物が進化の過程で遺伝情報に改変が加えられ続けてもその時々で常に「個」として存在し、次代へと引き継いで行くことを可能にする原理ではないかと思います。

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