私たちが目指している研究

はじめに

私たちの脳は、論理的な思考をしたり記憶したりするだけでなく、喜びや悲しみ、怒りや恐怖といった情動(emotion)を生み出し、それらを知覚します。情動は私たちの行動に大きな影響を及ぼします。喜びや恐怖をともなう体験が強烈に記憶されるといった経験は、誰しも持っています。たとえば、小さな子どもは、はじめのうちは信号の「赤」や「青」の意味はわかりません。しかし、子どもは赤信号で渡ろうとして、実際に車にひかれそうになったり、「あぶないよ」と大人に叱られたりしながら、信号の「赤」や「青」の意味を記憶し、その後は信号機の前で「すすめ」「とまれ」というとるべき行動を選びとることができるようになります。このように過去に経験した情動の情報にもとづいて、今、直面している状況においてとるべき行動を選びとることは、日常的に行われています。私たちは情動が人間も含めた動物の行動とその選択にどのような役割を果たしているのかを解き明かすために以下の3つのテーマに焦点を当てて研究を行っています。

 

1. 脊椎動物を通じて保存されている情動系神経回路の働きを探る
2. 情動行動における手綱核の役割を探る
3. 感覚神経の発生と神経新生の仕組みを探る

 

(補足1)ゼブラフィッシュ
インド原産の硬骨魚類に属する小型淡水熱帯魚。飼育が簡単で、一度に200個程度の卵を産み、数ヶ月で生殖可能な成魚に成長する。受精卵にDNAを微量注入することで遺伝子導入動物を簡単に作製できる。受精後2日半で発生を完了し、胚及び幼魚は透明なため、これまで動物の器官形成の仕組みを知るためのモデル実験動物として広く世界で使用されてきた。成魚を使った、脳による行動制御の仕組みの研究は本研究チームが世界のパイオニアである。