私たちの目指している研究

3. 感覚神経の発生と神経新生の仕組みを探る

 神経系の機能は、神経細胞とその標的細胞で構成される精巧で複雑なネットワークにより発揮されることから、その形成は非常に精密に制御されなければなりません。そして、神経発生の異常はさまざまな神経疾患を引き起こすことから、神経発生機構の理解は神経科学上だけではなく、医学・薬学上も重大な課題であるといえます。

 私たちの研究室では、ゼブラフィッシュの遺伝子改変体を用いて、主に感覚神経の神経発生機構を研究しています。神経上皮細胞は高度に発達した極性を持つ初期発生期の神経幹細胞であるが、神経上皮細胞自身や神経細胞を生み出すだけでなく、神経細胞の移動や神経突起伸長などの、様々な過程を制御することが明らかになってきている(Wada et al. 2006, Development, 図6)。神経上皮細胞による神経発生の制御は複雑かつ精巧ですが、その分子基盤は不明な点が多く残されています。

 私たちは、循環器系、呼吸器系、消化器系などを支配している迷走運動神経核形成に異常を持つ変異体を同定し解析を続けてきました(Ohata et al., 2009, Development, 図7)。 それらの変異体のうち、迷走運動神経細胞の移動に異常が見られる変異体towheadは、神経上皮細胞極性因子に異常をもっており、神経上皮細胞の細胞極性が破綻していることが明らかになりました。このことから、神経上皮細胞が迷走運動神経細胞の移動を制御するためには、神経上皮細胞の正常な細胞極性が必要であることがわかりました。さらに、神経上皮細胞の極性因子の複合体は、転写制御を介した神経細胞新生と、細胞内シグナル伝達回路を介した神経上皮細胞の極性の両方を、協調的に行っていることが示されました(Ohata et al., 2011, Neuron)。

 

図7迷走運動神経核形成のタイムラプスイメージング

(A)isl:GFPトランスジェニックゼブラフィッシュは運動神経にGFPを発現している。(a)背側(b)(a)の破線部における断面

(B)迷走運動神経核形成のタイムラプスイメージングの方法

(C)迷走運動神経核の発生のタイムラプスイメージング