私たちが目指している研究

2. 情動行動における手綱核の役割を探る

私たちは手綱核とよばれる間脳背側の神経核に着目し、情動行動における手綱核の役割を研究しています。哺乳類では手綱核は内側核(medial nucleus)と外側核(lateral nucleus)からなります(図)。内側手綱核は海馬と扁桃体からの外界の物理的状況の情報とその情動的価値の情報が中隔核と分界条を介して伝わります(図)。左右の内側手綱核は脚間核(interpeduncular nucleus, IPN)に投射し、間接的に腹側被蓋野(ventral tegmental area, VTA)のドーパミン神経細胞や縫線核(Raphé)のセロトニン神経核などのモノアミン神経細胞を制御していると考えられています。一方、外側手綱核には行動プログラムに関わる大脳皮質−基底核神経回路からの情報が腹側淡蒼球を介して伝わります(図)。外側手綱核は直接、腹側被蓋野や縫線核に投射し、モノアミン神経細胞を制御しています。

このような哺乳類における手綱核を介した神経回路の特徴から、価値判断を伴った外界状況に関する情報(外部環境情報)とそれによって喚起された目的を持った行動に関する情報(内部行動プログラム情報)との照合が内側手綱核と外側手綱核の間で行われ、照合のずれが生じた時に行動プログラムの改変が行われるのではないか、と私たちは考えています(図)。実際、彦坂らを含む複数の研究グループによって外側手綱核の神経細胞は報酬を期待する行動で報酬が得られなかった時に興奮し、ドーパミン神経細胞の活動を抑制することが示されています(Matsumoto and Hikosaka, 2007, Nature 447)。しかし、脚間核に投射する内側手綱核の役割や内側手綱核と外側手綱核の相互作用の実態などについては、ほとんど明らかにされていません。
私たちは手綱核を介する神経回路の機能を明らかにするためゼブラフィッシュ、マウス、ラットを用いて研究を進めています。

→ ゼブラフィッシュを用いた情動行動における手綱核の役割の研究

→マウスラットを用いた情動行動における手綱核の役割の研究